Editorial

COVID-19との闘いの中にあって研究を守る

Nature Medicine 26, 4 doi: 10.1038/s41591-020-0852-1

2020年3月11日、COVID-19はパンデミックと見なせることがWHOによって表明され、その後各国政府は国や地域レベルでの対応を強化し続けている。SARS-CoV-2に対するワクチンや承認薬がまだ存在しない現在、ソーシャルディスタンシングがウイルスの拡散を防止するのに使える唯一の手段であり、ほぼ全ての国が積極的なロックダウンの実行に踏み切った。学校は休校となり、イベントは中止され、多くの会社や商店が休業し、これがいつまで続くのかは分かっていない。

大学や研究機関の機能も突然停止してしまい、多くの研究者が自身の研究、さらには科学全体の将来にこのようなシャットダウンが及ぼす影響を憂えている。研究プロジェクトのほとんどが中止され、再開時期が不明という前代未聞の事態の科学研究への影響がどのようなものになるのかは予想もつかない。しかし、パンデミックにより世界経済が凍りつくという前例のない状況下で、こうした中途半端な状態が今後も長く続くことはほぼ確実と考えられる。

生物医学関係の研究者は特に影響が大きい。中断された実験は数えきれず、多くの研究所でサポートスタッフの数が不可欠の機能が果たせる最小限にまで切り詰められ、臨床科学の研究者も多くが研究を中止して診療現場に戻るように要請されている。臨床試験はほとんどが中止、もしくは患者の安全確保のために途中で打ち切りとなった。

しかし、科学研究者たちはすでに、蓄積した知識と技術でパンデミックへの対処に関わり始めており、こうした寄与が、科学研究の存続につながることは確かである。感染のもっと迅速な診断法、COVID-19という疾患の生物学的性質を明らかにした上での既存薬を転用する試み、パンデミック発生のモデル作成、ソーシャルディスタンシングの距離や自己隔離の期間の設定法などの解析にはすでに多数の研究者が加わっており、研究が進められている。

救急隊員、医師や看護師などの医療従事者はウイルスとの闘いの最前線で力を尽くしているが、科学者は現在突きつけられている多数の難問の解決法探索の核心に位置して闘っている。政府、資金配分機関、大学や研究機関は、科学研究に速いペースで起こっている変化に適応する努力を続け、この困難な時期に科学者への支援を強化し、COVID-19後の科学研究の健全な未来を確実なものにするための準備をしておくべきである。

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