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がん治療:注入された抗CD19 CAR T細胞の産物の特性は大細胞型B細胞リンパ腫患者での有効性と毒性に関連する

Nature Medicine 26, 12 doi: 10.1038/s41591-020-1061-7

CD19を標的とする自家キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)で高い有効性を示すが、長期寛解が見られる患者が半数以下であることや、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)などの治療に関連した有害事象が起こることが臨床上の難問となっている。今回我々は、自家axi-cel(axicabtagene ciloleucel)抗CD19 CAR T細胞注入産物のRNAを特定して回収し、単一細胞RNA塩基配列解読を行って、24人のLBCL患者での有効性や毒性と関連するトランスクリプトームの特徴を明らかにした。3か月後のフォローアップで、陽電子放射断層撮影法(PET)/コンピューター断層撮影法(CT)により完全奏効が確認された患者では、部分奏効や病態の進行した患者と比べて、記憶シグネチャーを発現するCD8 T細胞の頻度が3倍高かった。注入後7日目に無細胞DNA塩基配列解読によって分子的応答性を測定したところ、臨床奏効との顕著な関連が認められ(P = 0.008)、CD8 T細胞の疲弊を示すシグネチャーは、分子的応答性の低さと関連していた(q = 2.8 × 10−149)。さらに、単球様の転写特性を持つまれな細胞集団は、高悪性度ICANSと関連していた(P = 0.0002)。今回の結果は、注入されたCAR T細胞の産物の細胞特性や分子特性の不均一性が、LBCLでのaxi-cel療法後の奏効性や毒性のばらつきの一因となっており、7日目の分子応答がCAR T細胞の有効性の早期予測因子として役立つ可能性を示唆している。

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