Editorial

気候危機を自分の優先研究課題にしよう

Nature Medicine 26, 11 doi: 10.1038/s41591-020-1141-8

2019年は世界の平均気温が観測史上2番目に高く、2010~2019年の10年間の平均気温は過去最高となった。2020年には山火事が再び多くなり、その規模はオーストラリアと米国で数百万エーカーに及んだ。このような壊滅的事態は気候危機の最もはっきりした兆候と考えられるが、これは氷山の一角にすぎない。さまざまな研究が、温室効果ガスの放出と多数の健康問題(高温による慢性疾患の悪化、媒介生物による感染症の広がりと分布の変化、呼吸器疾患の悪化や食料不足など)を直接的、あるいは間接的に結び付けている。昨年、米国の70を超える医学研究グループが連携して「気候と健康についての医学界コンソーシアム(MSCCH)」を創設し、健康のための気候行動計画を発表した。これには、「気候変動は公衆衛生に対する真の緊急事態」であると述べられていて、気候危機がもたらす健康へのコストの理解を速やかに深めることの必要性が強調されている。

もっともなことだが、現在最も注目を集めているのは進行中のCOVID-19パンデミックへの対応である。だが、生物医学の研究者は今、気候危機の緊急性からも目を離してはいけない。科学者と健康問題の専門家はどちらも、包括的な気候問題にもっと関わるべきであり、気候変動の健康への影響に常に関心を寄せるだけでなく、気候変動に対処するための教育を提供し、生活や活動に際してカーボンフットプリントを再評価し、こうしたことに関する科学への知識と信頼を広めるように力を尽くすべきである。多くの都市はすでにグリーンインフラの概念を受け入れ、二酸化炭素排出量を減らし、地域でのこうした活動のプラスの影響を明らかにしている。しかし、COVID-19パンデミックという重大な危機を経験している間にも気候変動を否定し続け、政治的対応を取らない一部の国は、今後の気候危機に対処し、その健康への影響に備えることをしそうもない。国際的な協力は、気候変動の影響を低減するカギであるが、COP26の延期は重要な政策決定を遅らせ、取り返COVID-19のパンデミックは、緊急事態のコストは日頃の備えがない場合、予想外に大きなものとなることをはっきりさせた。気候危機について理解の深いトランスレーショナルリサーチや臨床医学の研究者は、社会の「Build Back Better」、つまり次の災害発生の前から備えを怠らず、災害に対してより強靱な対策を立て、災害リスクを削減していくことに重要な役割を果たせるはずだ。しのつかない結果を招きかねない。

COVID-19のパンデミックは、緊急事態のコストは日頃の備えがない場合、予想外に大きなものとなることをはっきりさせた。気候危機について理解の深いトランスレーショナルリサーチや臨床医学の研究者は、社会の「Build Back Better」、つまり次の災害発生の前から備えを怠らず、災害に対してより強靱な対策を立て、災害リスクを削減していくことに重要な役割を果たせるはずだ。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度