Letter

脂肪代謝/肥満:脂肪組織での脂質代謝回転と長期的な体重変化

Nature Medicine 25, 9 doi: 10.1038/s41591-019-0565-5

肥満は世界的流行病の域に達しており、脂質の代謝回転(脂質の蓄積や除去を行う能力)が脂肪組織の量を調節する仕組みの解明は重要な課題となっている。横断研究からは、体脂肪の過剰が脂肪組織での脂質除去率の低下と関連していることが明らかになっている。脂質の代謝回転は一生を通じて一定であるのか、それとも長期にわたる体重増加もしくは減少の間に変化するのかは知られていない。我々は、核実験由来の14Cの脂肪組織中トリグリセリドへの取り込みを測定することで、成人での脂肪細胞中脂質の代謝回転速度を最長16年間にわたって継続的に追跡し、決定した。脂質の除去速度は加齢の間に低下し、脂質の取り込み速度の代償的調節は起こらないので、その結果として体重が増加する。大幅な体重減少は、脂質の取り込み速度の変化によって起こっており、脂肪組織での脂質除去速度の変化によるものではない。また、脂質除去速度のベースラインが低い個体では、体重減少後に体重が安定に維持される可能性が高い。従って、顕著な体重減少を維持するためには、脂質代謝回転速度の適応が重要である可能性がある。まとめると、これらの知見は脂肪組織の脂質代謝回転が、ヒトでの長期にわたる体重超過状態や肥満、また減少した体重維持のための重要な要因であることを明らかにしている。

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