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難聴:優性進行性難聴モデルでの対立遺伝子特異的遺伝子編集によって難聴を防止する

Nature Medicine 25, 7 doi: 10.1038/s41591-019-0500-9

ヒトの優性(顕性)変異のほとんどは一塩基置換なので、我々は優性変異を効率的かつ選択的に破壊しながら野生型対立遺伝子に影響を及ぼすことがない遺伝子編集戦略を探した。しかし、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)のCas9(SpCas9)のような一般的に用いられるエンドヌクレアーゼは、ガイドRNA(gRNA)と標的DNAの間で最大7塩基までのミスマッチを許容できるので、単一ヌクレオチドの識別を達成することは難しいことがある。その上、一部のCas9酵素ではPAM(protospacer-adjacent motif)が、標的DNAとのミスマッチを許容できる。このような制約を回避するために、我々は優性進行性難聴(DFNA36)を引き起こす一塩基置換を特異的かつ効率よく破壊するCas9/gRNAの組み合わせを探して、14のCas9/gRNAのスクリーニングを行った。DFNA36のモデルとして我々が用いたBeethovenマウスは、聴覚に必要で、内耳有毛細胞の機械感覚伝達チャネルの1つの小孔形成サブユニットをコードする遺伝子Tmc1に1つの点変異を持つ。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のCas9の1つのPAMバリアント(SaCas9-KKH)が、BeethovenマウスおよびDFNA36ヒト細胞株で変異型対立遺伝子を選択的かつ効率的に破壊するが、野生型Tmc1/TMC1対立遺伝子は破壊しないことを突き止めた。アデノ随伴ウイルス(AAV)によるSaCas9-KKHの送達により、Beethovenマウスの難聴が注入後最大1年まで防止された。現在使われているClinVar登録データの解析から、ヒトの優性変異の約21%が同様の手法を用いて標的にできる可能性が明らかになった。

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