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がん治療: プログラム可能な細菌は長期間続く腫瘍退縮と全身性の抗腫瘍免疫を誘導する

Nature Medicine 25, 7 doi: 10.1038/s41591-019-0498-z

合成生物学は、生細胞の遺伝的プログラミングという方法によって医学の新時代を推し進めている。大変革につながるこの手法は、多様な環境をうまく感知してそれに応答するように改変したシステムの作出を可能にし、最終的には、分子ベースの治療法の能力を超える特異性と有効性をもたらす。特に注目を集めてきた分野の1つが、細菌を改変して組み込まれた治療薬をin vivoで選択的に放出する薬剤送達系である。我々は今回、非病原性の大腸菌株を改変して腫瘍微小環境内で特異的に溶菌し、コードされたCD47のナノボディアンタゴニスト(CD47nb)を放出するようにした。CD47は複数種のヒトがんで広く過剰発現している抗ファゴサイトーシス受容体である。腫瘍に定着する細菌によるCD47nbの送達は、マウスの同系腫瘍モデルで腫瘍浸潤性T細胞の活性化を増強し、迅速な腫瘍退縮を引き起こし、転移を抑制して、長期生存をもたらすことが示された。さらに、CD47nbを発現する細菌を局所的に注射すると、全身性の腫瘍抗原特異的免疫反応が引き起こされ、未治療の腫瘍増殖が抑制され、これは改変した細菌を使う免疫治療によって誘導されたアブスコパル効果という考えを実証している。従って、人工的に改変された細菌は、全身的な抗腫瘍免疫を引き起こす免疫治療薬を安全に局所へ送達するのに使えると考えられる。

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