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新生児医療:早産児の低酸素脳損傷の3Dヒト細胞モデル

Nature Medicine 25, 5 doi: 10.1038/s41591-019-0436-0

新生児医療における最近の医学的、また技術的な進歩により、超早産児の生存率は上昇してきた。しかし、このような新生児は出生後に低酸素発作を起こすリスクが高い。その原因は肺が未成熟であることや低血圧、または脳血流調節の欠如であり、早産児脳症と呼ばれる重篤な症状を発症することがある。受胎後25週未満で生まれた新生児では、80%以上で中程度から重度の長期にわたる神経発達障害が見られる。しかし、低酸素状態の影響を受けやすい大脳皮質内細胞タイプや、これに関連する未熟児の灰白質障害の基盤となる分子機構についてはまだ分かっていない。今回我々は、三次元ヒト脳領域特異的オルガノイドを用いて、酸素欠乏が皮質形成に及ぼす影響を調べた。ヒト大脳皮質の拡大に関連する皮質細胞種である中間型前駆細胞で特異的な異常が見つかり、これらがUPR(unfolded protein response)や変化に関連することが分かった。さらに、我々はこれらの知見をヒトの初代培養皮質組織で検証し、UPR経路の小分子修飾因子が、低酸素曝露後の中間型前駆細胞の減少を防ぎ得ることを明らかにした。ヒト細胞によるこのプラットフォームは、ヒト脳発生過程での損傷の基盤となる環境要因や遺伝因子の研究に役立つと考えられる。

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