Editorial

電子タバコについて認識を深めよう

Nature Medicine 25, 4 doi: 10.1038/s41591-019-0431-5

2018年末、米国政府は電子タバコに関する新しい統計を公表し、これは公衆衛生当局者に大きな衝撃をもたらした。米国高校生での電子タバコの使用が、前年に比べてほぼ80%急増したのである。US食品医薬品局(FDA)と米国疾病予防管理センター(CDCP)の報告書によれば10代の若者の5人に1人が電子タバコを常用していて、最近発表された研究によれば、電子タバコを使用したことのある若者は未経験者に比べて、紙巻きタバコを吸うようになる確率がずっと高いことも明らかになった。

電子タバコは当初、喫煙者が従来からのタバコをやめる助けとなると広く宣伝され、最近のデータでは、禁煙手段としては他のニコチン置換治療より有望であることが示されている。だが、電子タバコは禁煙のための万能薬にはほど遠い。公衆衛生当局者は、電子タバコ製品中の濃縮されたニコチンは喫煙者の中毒を悪化させるだけだと考えている。メーカーの間では「ニコチン軍拡競争」が起こっているという報道もあり、今までにないほど高濃度のニコチンを含む充填液(e-リキッド)が利用者に販売されていると非難されている。電子タバコのリスクを評価する際には、嗜癖につながるニコチンだけでなく、他の要素も考えなくてはならない。アメリカ脳卒中協会が2月に開催した国際会議では、40万人を対象とした研究で、電子タバコの使用者は心臓発作のリスクが高くなっているという研究結果が報告された。しかし、電子タバコ使用者には従来のタバコも吸っている二重使用者も多く、これが結果の説明を難しくしている。

こうした事態を考えれば、公衆衛生当局者は禁煙促進にもっと効果があるような電子タバコの開発をメーカーに要請すべきと思われる。また、FDAは電子タバコを他のタバコ製品と同じような規制の下に置いてきたが、このような分類を見直し、規制をもっと強化すべき時期なのではあるまいか。電子タバコの医療目的での使用は、メーカー側の狙いとは相容れないかもしれない。使用者がずっと手放せなくなるような製品を作ることは、確かにメーカーの利益に直結する。グローバルヘルスに関わる機関は、こうした利益相反が存在することを認識し、その上で製品の販売と使用にもっと厳格な規制をかけるべきだ。電子タバコはタバコとの戦いにおける有用な手段となるかもしれないが、それは賢く使われた場合に限ってなのである。

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