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黒色腫:スピッツ母斑様などの黒色腫で、臨床ゲノム塩基配列解読によって見つかった治療標的候補となる短縮型および融合型MAP3K8

Nature Medicine 25, 4 doi: 10.1038/s41591-019-0373-y

スピッツ母斑様黒色腫(spitzoid melanoma)は、黒色腫のバリアントで固有の形態的特徴を持ち、小児や青年に最もよく見られ、悪性度のスペクトラムは低悪性から極めて高悪性まで幅広い。これらの腫瘍は一般的にALKRETNTRK1/3METROS1およびBRAFの融合により誘導される。しかし、症例のほぼ50%では遺伝的ドライバーが確認されていない。今回我々は、1人の青年患者のスピッツ母斑様腫瘍について、臨床的な全ゲノム塩基配列解読とトランスクリプトーム塩基配列解読(RNA-Seq)を行い、MAP3K8(MEKを活性化するセリン–トレオニンキナーゼをコードする)の新たな遺伝子融合を明らかにした。他の治療選択肢は全て試みられていたこの患者に対して、MEK阻害剤を用いた治療が行われ、一過的な臨床応答が生じた。我々はこれに続いて49人の患者に由来するスピッツ母斑様腫瘍をRNA-Seqにより解析し、症例の33%でMAP3K8のインフレーム融合またはC末端短縮を見いだした。この融合型転写産物や短縮型遺伝子はいずれも、MAP3K8のエキソン1-8を含むが、自己阻害に関わる最終エキソンを欠いていた。がんゲノムアトラス(TCGA)から得たRNA-Seqデータのマイニングによって、成人の黒色腫の1.5%でこれに類似したMAP3K8の再編成が見つかった。従って、単一症例の包括的な臨床塩基配列解読によって見つかったMAP3K8再編成は、スピッツ母斑様黒色腫における最もよく見られる遺伝的事象であり、また成人の黒色腫にも存在し、これにはMEK阻害が有効である可能性がある。

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