Editorial

責任の枠組み

Nature Medicine 25, 2 doi: 10.1038/s41591-019-0352-3

昨年、中国の南方科技大学に所属する研究者が、子へのHIV感染を防ぐ目的でCRISPR–Cas9技術を使って受精卵のゲノム改変を行い、この受精卵から双子が誕生したことを公表した。中国メディアはさらに、やはり遺伝子編集が行われた受精卵で妊娠した第2の女性が存在することを確認した。この研究は、国際的に合意されている勧告を無視して行われたもので、透明性にも問題があるとして国内外から激しい非難を浴びている。

しかし、遺伝子編集が容易に行えるようになった現在、こうしたヒト受精卵の改変が今後も行われる可能性は極めて高い。この有望な技術を安全に臨床に移行するための、高い透明性を持ち、報告義務のある規制と認可の十分な検討が緊急に必要である。生殖細胞の遺伝子編集が法律によって当面禁じられている国も多いが、実際には今回のように実験を防止できなかったことを考慮すれば、研究を登録制にして、臨床的また倫理的評価を必ず受けるようにする規制の枠組みを世界的に確立することが望ましい。一般的な臨床試験と同じく、受精卵の遺伝子編集についても、適切な審査委員会によって試験計画や被験者募集などが厳しく評価され、また研究の結果として誕生した子の長期間にわたる観察が確実に行われなくてはならない。ヒト生殖系列細胞ゲノム編集の国際登録簿のような特別な国際的機構の速やかな確立は、医学的必要性に対して倫理的責任を確認し、透明な形でこの優れた技術を使用することの助けとなるだろう。

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