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がん治療:SHP2はKRAS変異型非小細胞肺がんのin vivoでの増殖に必要である

Nature Medicine 24, 7 doi: 10.1038/s41591-018-0023-9

RASの変異は、ヒトのがん、特に膵がん、大腸がん、非小細胞肺がん(NSCLC)で頻発している。RAS発がんタンパク質の阻害は難しいことが分かっており、下流のエフェクターを標的とする試みは、代償性耐性機構の活性化が障害となっている。また、KRAS変異型腫瘍は上流の増殖因子受容体シグナル伝達の阻害にも感受性を示さないことが確認されている。従って、上皮増殖因子受容体抗体による治療が有効なのはKRAS野生型大腸がんのみである。SHP2(別名PTPN11)は、受容体チロシンキナーゼシグナル伝達をRAS–RAF–MEK–ERK経路に結び付けている。これと一致して、SHP2の阻害はKRAS変異型あるいはBRAF変異型のがん細胞株では効果がないことが分かっている。我々のデータでも、正常な細胞培養条件下にあるKRAS変異型NSCLC細胞でSHP2を阻害してもほとんど影響がないことが示されている。対照的に、in vitroで増殖因子制限条件下でのSHP2阻害は老化応答を引き起こす。in vivoでは、KRAS変異型NSCLCでのSHP2阻害も老化応答を引き起こし、これはMEK阻害によって増強される。我々は、SHP2阻害がKRAS変異型NSCLC細胞の予想外の脆弱性であって、細胞培養では検出できないが、治療には使える可能性のあることを明らかにした。

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