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がん治療:野生型KRASの増幅した胃食道がんをMEKとSHP2の阻害の組み合わせにより標的とする

Nature Medicine 24, 7 doi: 10.1038/s41591-018-0022-x

カノニカルな変異で活性化されたKRASががんに担う役割は、十分明らかにされている。今回我々は、がんにおける2つ目のKRAS活性化方式、すなわちコーディング領域に変異がないKRAS遺伝子の局所的異常増幅について検討した。KRAS遺伝子のこのような局所的異常増幅は、食道や胃、卵巣の腺がんで高頻度に検出される。KRASの異常増幅した胃がんモデルでは、KRASタンパク質の顕著な過剰発現が見られ、KRAS–GTPレベルの急速な上昇により順応が可能なため、MAPK阻害に対する感受性がない。グアニンヌクレオチド交換因子のSOS1とSOS2や、タンパク質チロシンホスファターゼSHP2を阻害すると、この順応過程が弱められ、またこれらの因子を遺伝学的あるいは薬理学的に標的とすると、in vitroおよびin vivoの両方で、KRAS増幅モデルのMEK阻害に対する感受性を増強できることが分かった。これらのデータは、KRAS活性化機構にコピー数増幅が関わっていることを実証しており、このような腫瘍を、SHP2阻害とMEK阻害の併用によって治療標的とできる可能性を明らかにしている。

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