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代謝障害:免疫とべージュ脂肪細胞の間でニコチン性アセチルコリン受容体シグナル伝達を介して行われる情報交換

Nature Medicine 24, 6 doi: 10.1038/s41591-018-0032-8

活性化されたベージュ脂肪細胞はエネルギーの散逸を調節して、生物が低体温や肥満から身を守るのを助けることが、最近明らかにされた。これまでの研究で、成人にはベージュ様脂肪細胞が存在しており、こうした細胞は肥満や代謝性疾患の世界的流行を抑えるための、これまでなかった方法をもたらす可能性があることが示されている。我々は、活性化ベージュ脂肪細胞の持つ独自の特徴を明らかにすることを試み、皮下脂肪中ではこれらの細胞が活性化される際にChrna2(cholinergic receptor nicotinic alpha 2 subunit)の発現が誘導されること、またこの組織内のアセチルコリン産生免疫細胞がパラクリン機構によりこのシグナル伝達経路を調節していることを見いだした。CHRNA2は、脱共役タンパク質1(Ucp1)陽性ベージュ脂肪細胞選択的に機能しており、サイクリックAMPおよびプロテインキナーゼAに依存する経路を介して熱産生を上昇させた。CHRNA2を介するこのシグナル伝達は保存されていて、ヒトの皮下脂肪細胞にも存在している。マウスでChrna2を不活化すると、寒冷誘発性の熱産生応答が皮下脂肪選択的に障害され、高脂肪食によって誘導された肥満やそれに関連する代謝性疾患が増悪し、in vivoでのベージュ脂肪による調節の喪失は、たとえ部分的であっても、有害な結果をもたらすことが示された。我々の結果は、ベージュ脂肪選択的でCHRNA2によって仲介される免疫–脂肪間相互作用の存在を示しており、エネルギー代謝におけるニコチン性アセチルコリン受容体の新規な機能を明らかにしている。これらの知見は、ヒトの肥満を軽減するための治療標的の特定につながるかもしれない。

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