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統合失調症:胎盤の生物学的性質と統合失調症の遺伝的リスクの収束

Nature Medicine 24, 6 doi: 10.1038/s41591-018-0021-y

遺伝子が疾患感受性を高めるように働く環境状況が明らかになれば、複合疾患の発症機序についての手掛かりが得られる可能性がある。本論文では、統合失調症とゲノムリスク(この研究では、ゲノム規模関連研究から得られた多遺伝子性リスクスコア(PRS)を指す)とのつながりが、子宮内環境によって調整されることを報告する。米国、イタリア、ドイツで得られた互いに無関係の試料において、PRSによって説明される統合失調症の易罹患性は、早期合併症(early-life complications:ELC)がある場合には、ない場合に比べて5倍以上高かった。ELCの病歴を持つ患者は、この病歴のない患者より有意に高いPRSを示し、これはドイツと日本からの追加試料でも確認された。統合失調症座位からなる遺伝子セットでELCと相互作用するものは胎盤で高発現していて、合併症患者の胎盤と正常妊娠時の胎盤とを比べると発現に差異があり、また、子が男子である場合の胎盤では、女子の場合に比べて特異的な発現上昇が見られた。パスウェイ解析から、PRS–ELC間の相互作用を促す遺伝子群は、細胞ストレス応答に関与していることが明らかになった。そのような相互作用を促さない遺伝子群は直交性の生物学的過程(例えばシナプス機能)に関与している。我々は、統合失調症に関連する最も重要な遺伝的バリアントのサブセットは、ストレスに対する胎盤応答に影響する事象に感受性の発生過程に集中すると結論する。これは性差や一次予防についての手掛かりにつながるかもしれない。

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