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がん治療:ARID1A欠損は変異性を高め、免疫チェックポイント阻害により効果を発揮する抗腫瘍免疫療法を強化する

Nature Medicine 24, 5 doi: 10.1038/s41591-018-0012-z

ARID1A(AT-rich interaction domain 1A、別名BAF250a)は、がんで変異していることが非常に多い遺伝子の1つである。ARID1Aの変異は不活性化変異であってARID1Aの発現喪失につながるので、治療標的になりにくい。従って、ARID1A変異型腫瘍の治療に使えるような脆弱性を生じるARID1A欠損の分子的因果関係を明らかにすることは、臨床的に重要である。今回我々はプロテオームスクリーニングを行い、ARID1Aがミスマッチ修復(MMR)タンパク質MSH2と相互作用することを見いだした。ARID1AはDNA複製の間にMSH2をクロマチンに誘導し、MMRを促進する。逆にARID1Aの不活性化はMMRを障害し、変異誘発を増加させる。ARID1A欠損は、マイクロサテライトの不安定化というゲノムシグネチャーや、顕著なC > T変異パターンと相関していて、多数のヒトがんタイプにわたって変異負荷を増大させた。ARID1Aを欠損した卵巣がん細胞株により同系マウスで形成された腫瘍では、変異負荷の増大、腫瘍浸潤性リンパ球数の増加、およびPD-L1発現が見られた。さらに、抗PD-L1抗体の投与によって、ARID1A欠損型卵巣腫瘍の担がんマウスでは腫瘍負荷が減少し生存期間が延長されたが、ARID1A野生型腫瘍の担がんマウスではこうした影響は見られなかった。これらの結果から、ARID1A欠損はがんでのMMR障害や変異誘発性表現型の一因となっており、免疫チェックポイント阻害療法と協調的に働いて効果を発揮する可能性がある。

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