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がん治療:H3-K27M+びまん性正中グリオーマでの抗GD2 CAR T細胞の強力な抗腫瘍効果

Nature Medicine 24, 5 doi: 10.1038/s41591-018-0006-x

ヒストンH3 K27M(H3-K27M)変異を持つびまん性内在性橋グリオーマ(DIPG)などのびまん性正中グリオーマ(DMG)は、侵襲性で、一般的に致死性とされている小児脳腫瘍である。キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞は、B細胞性の悪性腫瘍で優れた臨床活性を発揮し、最近の結果では中枢神経系の悪性腫瘍でも有効性が示唆されている。本研究では、患者由来のH3-K27M変異型培養グリオーマ細胞において、ジシアロガングリオシドGD2の高発現が一様に見られることを報告する。4-1BBz共刺激ドメインを組み込んだ抗GD2 CAR T細胞は、in vitroでサイトカインの抗原依存的でロバストな産生を示し、DMG細胞を殺した。互いに無関係な患者由来の5種のH3-K27M+DMGの同所性異種移植片モデルでは、GD2を標的とするCAR T細胞の全身投与によって、少数の残余GD2loグリオーマ細胞を除いて、移植された腫瘍が排除された。これまで、GD2を標的とするCAR T細胞は臨床試験で良好な忍容性を示してきた。同所性移植片を持つマウスの大半は、GD2を標的とするCAR T細胞の投与を忍容したが、抗腫瘍作用の急性期に起こった腫瘍周辺の神経炎症は脳水腫を引き起こし、一部のマウスはこれによって死亡した。正中グリオーマが不明瞭な神経解剖学的部位に生じることを考えると、この方法のヒトへの応用には注意深い監視と積極的な神経集中的治療管理が必要となるだろう。橋、視床、および脊髄のH3-K27M+びまん性グリオーマの治療にGD2を標的とするCAR T細胞療法を使うことは、慎重な集学的治療と共に行うならば、このような致死的な小児がんの転帰に変革をもたらす可能性がある。

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