Article

骨粗鬆症:スフィンゴシン 1-リン酸リアーゼを骨量低下に対するアナボリック治療の標的とする

Nature Medicine 24, 5 doi: 10.1038/s41591-018-0005-y

スフィンゴシン 1-リン酸(S1P)が関わるシグナル伝達は骨代謝に影響を及ぼすが、このシグナル伝達が骨疾患の治療に使える可能性はまだ調べられていない。本論文では、S1Pの非可逆的分解を行う唯一の酵素であるS1Pリアーゼの条件付き欠失や薬理学的阻害によってマウス成体でS1Pレベルを上昇させると、骨形成、骨量、および骨強度が著しく増加し、白色脂肪組織が大幅に減少することを示す。S1P2を介するS1Pシグナル伝達は、OsterixおよびPPAR-γを下方調節することで脂肪生成を抑える代わりに骨芽細胞形成を強力に促進し、それと同時に、新たに発見されたp38–GSK3β–βカテニン経路およびWNT5A–LRP5経路を介してオステオプロテジェリンを誘導することで破骨細胞形成を阻害した。その結果、S1P2欠失マウスは骨量が減少し、肥満となった。卵巣摘除に起因する骨減少症では、S1Pリアーゼの阻害は骨量増加に対して副甲状腺ホルモン(iPTH)の間欠投与と同程度に有効であり、骨強度の増強についてはiPTHより優れていた。また、マウスでのリアーゼ阻害は、オステオプロテジェリン欠損によって誘導された重篤な遺伝性骨粗鬆症の回復につながった。ヒトでは、SHIP-Trend集団研究の参加者4091人のデータから、血清中S1P濃度と骨形成マーカーの間には正の関連があるが、骨吸収マーカーとの関連は見られないことが明らかになった。加えて、血清中S1P濃度は、血清カルシウムとは正の関連、PTHとは負の関連、BMI(body mass index)との間には曲線状関連を示した。定量的超音波測定によって決定された骨の剛性は、S1Pレベルと骨形成マーカーPINPレベルの両方と負の相関関係にあり、S1Pが骨同化活性を刺激して骨質低下を防止することが示唆された。S1Pを用いた薬剤は、骨粗鬆症関連疾患の治療の有望な治療手段と考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度