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うつ病:内嗅皮質–歯状回神経回路の刺激は抗うつ的に働く

Nature Medicine 24, 5 doi: 10.1038/s41591-018-0002-1

大うつ病性障害(MDD)は「神経回路の破綻(circuitopathy)」であると考えられており、脳の刺激療法は海馬機能不全などのMDDの症状を軽減すると期待されている。内嗅皮質(Ent)のような海馬上流回路を刺激すると、マウスやヒトで学習・記憶が改善されるが、これが抗うつ的に働くかどうかは分かっていない。今回我々は、マウスで心理社会的ストレスにより誘導されるタンパク質を、分子標的手法を用いてEnt領域特異的にノックダウンしたり、化学遺伝学的手法を用いてEntニューロンを刺激したりすると、抗うつ様効果が誘導されることを示す。作用機構としては、Ent刺激で誘導される抗うつ様行動は海馬ニューロンの新生に依存することが明らかになった。従って、Ent–海馬求心性回路の刺激は、海馬の神経新生の亢進を介して抗うつ様効果を発揮する。これらの知見は、学習・記憶に影響を及ぼすことがすでによく知られているEntのグルタミン酸による求心性刺激が、MDD治療に力を発揮する可能性を強く示している。

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