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がん治療:SHP2の阻害は、ALK再構成の起こった非小細胞性肺がんでALK阻害剤に対する感受性を回復させる

Nature Medicine 24, 4 doi: 10.1038/nm.4497

ALK(anaplastic lymphoma kinase)が再構成されている非小細胞性肺腫瘍のほとんどは、当初はALKの低分子阻害剤に応答するものの、薬剤抵抗性となることが多い。非常に強力な第2世代ALK阻害剤に対する抵抗性が生じた腫瘍のうち、およそ半分ではALKに抵抗性変異が存在するが、残りの半分はこれとは異なる機構によって抵抗性が生じている。後者のグループでは、抵抗性を推進するさまざまなチロシンキナーゼのうちの少なくとも1つが活性化されていることが多い。このような腫瘍は、ALKを標的とする第3世代阻害剤であるロルラチニブ(臨床で見つかったALKの全ての抵抗性変異を克服できる)に対する応答は期待できず、他の治療選択肢も限られている。今回我々は、多数のALK阻害剤に抵抗性を示す患者由来の細胞(PDC)で1000の遺伝子のshRNAスクリーニングを行い、ALK阻害に対する感受性を付与する遺伝子を明らかにした。この方法により、非受容体型プロテインチロシンホスファターゼであるSHP2が、複数のPDCに共通して見られる抵抗性のノードとして働いており、標的化可能であることが突き止められた。SHP2は、ALK阻害剤に対する抵抗性を促進する複数のチロシンキナーゼの下流で、並行する生存刺激を入力する。SHP2の最近発見された低分子阻害剤であるSHP099を、ALKのチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)セリチニブと組み合わせて投与すると、RASやERK1およびERK2(ERK1/2)の補償的な再活性化が阻害されて抵抗性PDCの増殖が停止した。これらの結果は、ALK阻害とSHP2阻害の組み合わせが、複数の異なるALK非依存的機構によって抵抗性を生じたがんに対して有望な治療戦略になり得ることを示唆している。

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