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アテローム生成:マクロファージからのコレステロール流出とアテローム生成の長鎖非コードRNAによる転写性調節

Nature Medicine 24, 3 doi: 10.1038/nm.4479

核内受容体は環境からの合図に応答して遺伝子発現を調節するが、核内受容体の細胞種特異性を決める分子事象はほとんど解明されていない。本論文では、肝臓X受容体(LXR)の細胞種特異的作用の調節に長鎖非コードRNA(lncRNA)が果たす役割について述べる。LXRはステロールによって活性化される核内受容体で、コレステロール恒常性に関与する遺伝子の発現を調節しており、アテローム性動脈硬化発症の原因と結び付けられてきた。我々は、lncRNAであるMeXis(macrophage-expressed LXR-induced sequence)が、コレステロール流出の調節に重要な遺伝子Abca1のLXR依存的な転写を増幅することを突き止めた。MeXis遺伝子を欠損するマウスでは、組織選択的にAbca1の発現低下が見られる。また、マウス骨髄細胞からMeXisが失われるとAbca1座位の染色体構造が変化し、コレステロール過負荷に対する細胞応答が障害され、アテローム性動脈硬化の発症が加速する。反応機構について調べたところ、MeXisは転写コアクチベーターDDX17と相互作用して、プロモーターへの結合を誘導することが明らかになった。今回、MeXisがLXR依存性の遺伝子発現を調節するlncRNAであると分かったことは、生理的状態や疾患時の核内受容体の細胞種選択的作用の基礎となる機構の解明を進めるだろう。

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