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◆NEWS FEATURE:春を迎える動物たち:さまざまな動物の春機発動期はヒトに何を教えてくれるのか

Nature Medicine 24, 2 doi: 10.1038/nm0218-114

動物の春機発動期は一時的なものでありながら、個体に大きな影響を及ぼす。だが、この現象については意外なほど関心が向けられておらず、研究も少ない。この時期はさまざまなホルモンが働いて若い個体が性的に成熟する過程である、ということについてはほとんどの研究者が賛成しており、動物はこの時期に入りさえすれば繁殖できるようになると考えられているが、ヒトを含めた多くの動物は春機発動期を通過した後になって繁殖を開始する傾向がある。例えばマカクザルの雌は生後3年で仔を産めるが、この年齢では仔の死亡率が高く、もう少し歳を取ってから交尾することが多い。ヒトでも、十代の母親は出産適齢期に出産した母親に比べて、自身や赤ん坊が合併症になるリスクが高い。春機発動期が長く続くことは、多くの動物で生殖的成熟を助けていて、生まれる仔の生存率向上を確実にしているのかもしれない。また、春機発動期の引き金となるのが何かという問題もまだ解決されていない。ヒトの場合は、環境要因、ある種の体内時計、あるいはこれらの組み合わせによって思春期に入る時期が決まるのではないかと考える研究者もいる。しかし、一般的な実験用動物以外の生物についての研究からは、こうした問題について予想外の手掛かりも得られている。トロント大学の行動神経科学者のM Holmes は「春機発動期はほぼ全ての種類の動物が通過するのだから、大きな枠組みは共通で、問題となる差異は種によって異なるような細部に潜んでいるに違いない」と語っている。

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