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造血幹細胞:黄体形成ホルモンの抑制は造血障害後の造血幹細胞回復を増強する

Nature Medicine 24, 2 doi: 10.1038/nm.4470

がん治療や偶発的暴露による放射線障害を被った後に、造血幹細胞(HSC)のプールを保護し、造血を再生するための新たな戦略が、臨床で喫緊に必要とされている。性ホルモンは、性的二型性を促進する役割の他に、HSCの自己再生、分化、および増殖を調節していることを示唆する証拠は増えつつある。老化マウスや免疫不全マウスでは、性ステロイドを除去すると骨髄のリンパ球産生とHSC回復が促進されることを、我々および他の研究グループが以前に報告している。我々は、通常は致死量となる放射線の全身照射(L-TBI)の24時間後に、黄体形成ホルモン(LH)放出ホルモンのアンタゴニスト(LHRH-Ant:性ホルモンの抑制に臨床で広く使われている)を投与すると、造血系の回復やマウスの生存が促進されることを見いだした。意外にも、この保護作用は性ステロイドとは無関係であり、LHレベルの抑制に依存していた。ヒトとマウスの長期自己再生HSC(LT-HSC)は、LH/胎盤性性腺刺激ホルモン受容体(LHCGR)を高レベルで発現しており、ex vivoでLHで刺激すると増殖が起こった。対照的に、L-TBI後にLHを抑制するとHSCの細胞周期への進入が阻害され、その結果、静止期のHSCが増えて、細胞は疲弊しにくくなった。これらの知見は、HSC機能の調節にLHが担う役割を明らかにし、造血障害後の造血系再生のための新たな治療戦略を示している。

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