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がん治療:ASCT2に依存するグルタミン輸送の薬理学的阻害は前臨床モデルで抗腫瘍効果をもたらす

Nature Medicine 24, 2 doi: 10.1038/nm.4464

がん細胞に見られる固有の代謝要求性は、プレシジョン・メディシン時代の創薬に成功をもたらす可能性が高い。しかし、がんの代謝を治療標的としてこれまでに作られた薬剤の数は、意外なほど少ない。中性アミノ酸のグルタミンは、がん細胞で使われている多くの代謝過程、すなわち生合成・細胞シグナル伝達・酸化保護などで、重要な中間体として働いている。今回我々は、膜を通るグルタミンの流出入の競合的アンタゴニストとして作用する小型分子で、アミノ酸輸送体ASCT2を選択的標的として強力に阻害するV-9302の前臨床開発について報告する。ASCT2をV-9032によって薬理学的に阻害すると、がん細胞の成長と増殖が減弱し、細胞死が増え、酸化ストレスが高まることによって、in vitroin vivoで抗腫瘍応答を助けることが分かった。これは腫瘍学において、グルタミン輸送体の薬理学的阻害の有用性を示した、我々の知る限りで最初の研究である。この方法は新たな種類の標的治療であり、がん細胞の代謝を標的とする治療へのパラダイムシフトの枠組みを築くものと言える。

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