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感染症:DOCK8欠損患者における皮膚ウイロームの拡大

Nature Medicine 24, 12 doi: 10.1038/s41591-018-0211-7

宿主免疫と細菌群集との間にはバランスを恒常的に維持するための複雑な相互作用が存在することが、ヒトマイクロバイオームの研究によって明らかになっている。健康な皮膚の微生物群集は細菌が優勢で、バクテリオファージを主とするウイルスの頻度は低い。特定の真核細胞ウイルスが、よくある皮膚疾患と稀な皮膚疾患の両方に関連していることは明らかになっているが、皮膚ウイルス群集のカタログ化はまだ十分でない。宿主免疫の変化は、微生物–宿主相互作用の解明を進める機会となる。原発性免疫不全患者では、皮膚などへの多様なウイルス感染、細菌感染、真菌感染や寄生虫感染が見られる。DOCK8(dedicator of cytokinesis 8)欠損は、皮膚および全身の再発を繰り返す感染に加えて、アトピーとがんに対する易罹患性を特徴とするまれな原発性ヒト免疫不全である。リンパ球で高発現しているグアニンヌクレオチド交換因子をコードするDOCK8はアクチン細胞骨格を調節していて、これはリンパ球が皮膚のようなコラーゲンを多く含む組織中を遊走するのに欠かせない。DOCK8を欠損する皮膚試料のメタゲノム高深度塩基配列解読データの解析によって、健常ボランティアと比べると真核細胞ウイルスの頻度上昇と多様性の顕著な増加が起こっていることが明らかになった。de novoアセンブリー法によって数百の新規ヒトパピローマウイルスゲノムが見つかり、未培養微生物の存在が明らかになった。DOCK8欠損患者での皮膚ウイロームの拡大は、真核細胞ウイルスの定着と感染の制御における免疫監視の重要性をはっきり示している。

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