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水に流してはいけない—下水にはウイルス情報がたんまり含まれている

Nature Medicine 24, 10 doi: 10.1038/s41591-018-0218-0

2013年、イスラエルでは25年ぶりに病原性のポリオウイルスが見つかった。この国では2005年以降、ポリオ経口ワクチンの使用が中止されており、経口ワクチン未接種の児童が多いことから、ウイルス検出から数カ月ほどで、拡散と感染を防止するためにワクチン投与が再開された。その結果、重篤な症状の患者を出すことなく、翌年にはウイルスが姿を消したのである。ここで注目すべきは、ウイルスが患者からではなく、この国の下水から見つかったという点である。もし環境の監視が行われていなければ、ポリオ大流行につながりかねなかったというこの事件から分かるように、排泄物を含む汚水のモニタリングは、危険なウイルスと闘う際に強力な早期警戒システムとして役に立つ。イスラエルやフィンランドなどのいくつかの国は数十年前からポリオウイルスなどについてモニタリングを実施しているし、分析法も確立しつつある。だが、大半の国にはまだ汚水監視システムが存在せず、ウイルスやファージに関する貴重な情報を、文字通り、ドブに捨てているのである。

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