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腸内微生物相:民族的起源は多様だが地理的環境を共有する集団での腸内微生物相の組成の全体像

Nature Medicine 24, 10 doi: 10.1038/s41591-018-0160-1

ヒトの腸内には無数の微生物が生息しており、健康の重要な要因と見なされている。腸内微生物相の組成は、食餌や生活様式、あるいは遺伝的背景などの特性により形作られると考えられており、民族的起源が同様の個人間では普通は共通している。民族性と腸内微生物相との関係を調べたこれまでの研究は、ほとんどの場合、地理的に離れた場所に住む小さな集団を比較している。今回我々は、HELIUS(Healthy Life in an Urban Setting)研究の参加者2084人の糞便中16SリボソームRNA遺伝子の塩基配列解読を行い、同じ都市に住む人々では、民族的背景が同じ人々が腸内微生物相の特徴を共有する傾向があることを明らかにした。民族性は腸内微生物相の個人間での相違の一因となっていることが分かり、OTU(operational taxonomic unit)によって主に特徴付けられる主要な3つのグループ(極;pole)は、プレヴォテラ属(Prevotella)(モロッコ系、トルコ系、ガーナ系)、バクテロイデス属(Bacteroides)(アフリカ系スリナム人、南アジア系スリナム人)、クロストリディア目(Clostridiales)(オランダ系)に分類される。腸内微生物相のα多様性は、オランダ系が最大、南アジア系スリナム人が最小であり、多数のOTUについてこれと一致した増減が見られた。α多様性における民族的な違いや個人間の相違は、代謝の健康状態とは無関係で、社会人口学的特徴、生活習慣、食餌のような因子を含む民族に関連する特徴によっては、部分的にしか説明できない。従って、個人の民族的起源は、民族的に多様な社会におけるマイクロバイオーム研究やその今後の応用を考える上で重要な因子だと思われる。

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