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がん治療:前立腺がん関連SPOP変異はBRD4の安定化によりBET阻害剤への抵抗性をもたらす

Nature Medicine 23, 9 doi: 10.1038/nm.4378

タンパク質のBET(bromodomain and extraterminal)ファミリーは、BRD2、BRD3、BRD4および精巣特異的アイソフォームであるBRDTの4つのタンパク質から構成され、主に転写コアクチベーターとして機能して、細胞周期、アポトーシス、遊走、浸潤などのさまざまな細胞過程で重要な役割を担っている。BETタンパク質は、白血病でのc-Mycのような主要ながんドライバーの発現上昇や、前立腺がんでのARやERGのような発がん性因子の転写活性の促進によって、これらのドライバーの発がん機能を増強する。病理学的には、BETタンパク質はさまざまな種類のヒトがんで過剰発現していることが多く、がんとの臨床的なつながりが示されており、がん患者で選択的な阻害を行うための治療標的として関心を集めている。こうした目的で、JQ1やI-BETなどの複数のブロモドメイン阻害剤が開発され、初期臨床試験で有望な結果が示されている。前臨床モデルではBET阻害剤への抵抗性が報告されているが、獲得抵抗性の基盤となる分子機構はほとんど解明されていない。今回我々は、cullin-3SPOPが、BRD2、BRD3、BRD4を含むBETタンパク質をユビキチンが仲介する分解の対象とすることを報告する。病理学的には、前立腺がん関連SPOP変異体はBETタンパク質に結合できず、分解を促進することも不可能で、SPOP変異型前立腺がんではBETタンパク質の存在量が増加する。その結果、SPOP変異を持つ患者に由来する前立腺がん細胞株やオルガノイドは、BET阻害剤誘発性の細胞増殖停止やアポトーシスにより高い抵抗性を示すようになる。従って、我々の結果は、前立腺がんではSPOPががん抑制因子としての役割を持ち、BETタンパク質の安定性の負の調節因子として作用していることを示しており、SPOP変異を持つ前立腺がん患者でBET阻害剤への抵抗性が生じる分子機序も明らかにしている。

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