Analysis

ゲノム編集:CRISPRを用いた治療目的のゲノム編集へのヒトの遺伝的多様性の関わり

Nature Medicine 23, 9 doi: 10.1038/nm.4377

CRISPR–Casゲノム編集技術は、疾患を引き起こす変異をDNAレベルで修正する治療手段として非常に大きな可能性を持っている。個々の患者間で高度に保存されている標的を対象とする典型的な薬剤開発戦略とは対照的に、ゲノムレベルでの治療は、個人間に本来的に見られるかなりの遺伝的ばらつきに対処しなければならない。本論文では、最近公表されたExAC(Exome Aggregation Consortium)および1000ゲノムプロジェクトのデータセットを解析し、ヒトの遺伝的多様性が治療目的でのゲノム編集の際のCasエンドヌクレアーゼの標的選択にどのように影響するかを明らかにした。このような遺伝的多様性は一部のCasエンドヌクレアーゼで標的部位を誤認させることが見いだされたので、我々は多様な患者集団で高い有効性を示すと予測されたガイドRNAのリストを示すことにした。さらなる解析で、我々は治療と関係のある12の遺伝子に注目して、遺伝的ばらつきがこれらの座位に関するオフターゲット候補にどのように影響するかを考察した。我々が行った解析では、大規模な個人集団ではほとんどのオフターゲット部位候補はまれであると予想され、安全性確保のためには全ゲノム塩基配列解読による患者のプレスクリーニングが必要であることが強調されている。この情報は、ガイドRNAの選択についての経験的方法とともに、患者集団全体にわたって有効性および安全性を最大にするCRISPRを使った治療法の設計の枠組みに組み込めると考えられる。

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