Editorial

オピオイド常用癖の神経生物学的性質に対処する

Nature Medicine 23, 7 doi: 10.1038/nm.4374

薬物常用の経験がある人、あるいは薬物使用障害の症状を示す人の数は世界で2,900万人を超えている。この数字はここ数十年間でほぼ一定だが、過剰摂取による死者の数は世界的に急増している。この増加の原因は多数考えられるが、その中で無視できないのがオピオイド常用癖と乱用の広がりである。NIDA(国立薬物乱用研究所)とNIHが公表したオピオイド常用癖の研究を中心とする新たな戦略的イニシアチブでは、第一の目標をオピオイド過剰摂取に迅速に効果を発揮する治療薬の開発としていて、例として薬剤送達法の改良やオピオイド受容体アンタゴニストの探索などが挙げられている。また新規な治療介入標的の探索には、慢性疼痛の病態生理学的研究と、オピオイド受容体と報酬回路との関連の研究が不可欠と考えられており、こうした研究を基盤とする全く新しい機構に基づく治療薬の開発も取り上げられている。一方、動物モデルについては、研究のエンドポイントをヒトでの疼痛や嗜癖経験と関連づけることがこれからの中心的な課題となるとされている。常用癖や疼痛に見られる複雑な症状を生じさせる神経生物学的過程に対処するには、多様な治療標的が必要となるだろう。常用癖を前臨床的に扱っている研究者と慢性疼痛の研究者の連携の強化は、こうした問題解決に不可欠と考えられる。

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