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変形性関節症:老化細胞の局所での除去は外傷後変形性関節症の発症を減らし、再生促進環境を作り出す

Nature Medicine 23, 6 doi: 10.1038/nm.4324

多くの脊椎動物組織で老化細胞(SnC)は加齢に伴って蓄積しており、老化関連分泌現象(SASP)に関わる因子群の分泌を介して老化関連病態に関与しているらしい。SnCの除去により、いくつかの病態は進行が遅くなり、健康寿命が延長する。一方、変形性関節症(OA)は関節軟骨の変性を特徴とし、疼痛や身体障害につながる慢性疾患であり、老化と外傷はその発症のリスク要因である。関節置換術を受けた患者から単離された軟骨組織には老化した軟骨細胞が見られるが、これがOAの発症機序に果たす役割は明らかになっていない。SnCがOAの原因に関わっている可能性を検証するために、我々はp16-3MRトランスジェニックマウスを用いて実験を行った。このマウスは、合成ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼと単量体型赤色蛍光タンパク質ドメインを含む融合タンパク質に加え、単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV-TK)の短縮型を発現させるp16INK4aCdkn2a)プロモーターを持つ。このマウス系統を使うことで、前十字靭帯離断(ACLT)の後にSnCを選択的に追跡して除去することが可能になった。SnCはACLT後に関節軟骨および滑膜に蓄積するが、これらの細胞を選択的に除去すると外傷後のOA発症が減少し、疼痛の軽減、軟骨形成の増強が引き起こされることが分かった。これらの結果は、SnC選択的に細胞死を起こさせる老化細胞除去分子をトランスジェニックマウス、非トランスジェニックマウス、老化マウスの関節内に投与することで確認された。また、全膝関節置換術を受けたOA患者から単離された軟骨細胞のin vitro培養からSnCを選択的に除去すると、老化マーカーや炎症マーカーの発現が低下する一方で、軟骨組織細胞外マトリックスタンパク質の発現が上昇した。まとめると、これらの知見は、SnCが変形性関節疾患治療のための治療標的として使用できる可能性を裏付けている。

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