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脂質代謝:低温誘導性リポカイン12,13-diHOMEは褐色脂肪組織への脂肪酸輸送を促進する

Nature Medicine 23, 5 doi: 10.1038/nm.4297

成人では褐色脂肪組織(BAT)とベージュ脂肪組織が熱産生のためにエネルギーを消費するので、肥満、糖尿病、高脂血症などの代謝性疾患の治療の標的として関心を持たれている。低温暴露はBATの活性化によりエネルギー消費を高めることができ、それが栄養の代謝を改善することが示されている。しかし、このような治療法は時間がかかる上に不快であるため、薬理学的介入法が必要であることは明らかである。最近、組織から放出されて、局所的に、あるいは全身でインスリン感受性や耐糖能を促進する脂質が見つかり、そのような脂質はまとめて「リポカイン」と呼ばれている。BATは脂質を取り込んで燃焼させる特殊化した代謝組織であり、全身性の代謝恒常性に結びついているので、我々は低温に応答してBATを活性化する熱発生性リポカインが存在するのではないかと考えた。本論文では、脂質である12,13-ジヒドロキシ-9Z-オクタデセン酸(12,13-diHOME)がBAT活性の刺激因子であり、そのレベルがボディマス指数やインスリン感受性と負に相関することを示す。全体的なリピドミクス解析を用いて、12,13-diHOMEが低温に曝露されたヒトおよびマウスの循環中では増大していることが分かった。さらに、BATでは低温刺激によって、12,13-diHOMEを産生する酵素群のみが誘導されることも分かった。12,13-diHOMEを注入するとBATの燃料取り込みが急激に活性化され、寒冷耐性が高まり、これが血清トリグリセリドレベルの低下を引き起こした。機構としては、12,13-diHOMEは、脂肪酸(FA)輸送体のFATP1およびCD36の細胞膜への移動を促進することで、褐色脂肪細胞へのFAの取り込みを増強する。これらのデータは、12,13-diHOME、もしくはその機能的類似体が代謝性疾患の治療薬として開発できる可能性を示している。

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