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疼痛治療:ミクログリアのパネキシン1チャネルの遮断は齧歯類のモルヒネ離脱症状を軽減する

Nature Medicine 23, 3 doi: 10.1038/nm.4281

オピエートは疼痛治療に不可欠だが、慢性的な使用ではオピエート治療の終了により消耗性の離脱症状が生じることがある。こうした患者の多くが、離脱の嫌悪症状の軽減あるいは回避のためにオピエート使用を継続する。それ故、離脱は依存者のオピエート使用の重要な決定要因であるが、離脱症状の原因となる機構はほとんど解明されておらず、有効な治療法はない。今回我々は、パネキシン1(Panx1)チャネルがオピエート離脱の治療標的となることを突き止めた。モルヒネからの離脱は、オピエートの鎮痛作用に関わる重要な部位である齧歯類脊髄後角内のラミナIおよびIIニューロン系で、長期にわたるシナプス促通を誘導することが分かった。ミクログリアでPanx1を遺伝的に除去すると脊髄のシナプス促通が見られなくなり、モルヒネ離脱の後遺症が軽減された。Panx1は最大1kDaのサイズの分子の透過が可能であり、またATPを放出するという独特の性質を持つ。モルヒネ離脱の際にはPanx1の活性化によりミクログリアからのATP放出が促進され、また、アピラーゼ投与による内因性の脊髄ATPの分解により離脱行動が減少することが分かった。逆に、ATP分解を薬理学的に阻害すると離脱症状が増悪する。Panx1遮断ペプチド(10panx)、あるいは臨床で用いられる広域Panx1遮断薬(メフロキンあるいはプロベネシド)の投与はATP放出を抑制し、離脱症状の重篤度を低下させた。今回の結果は、齧歯類ではPanx1を介したミクログリアからのATP放出がモルヒネ離脱に必要であり、Panx1の遮断がオピエートによる鎮痛に影響を及ぼさずに離脱の重篤度を軽減することを示している。

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