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がん:膵臓腫瘍でのがん細胞自律的な細胞外タンパク質異化の存在を示す直接的証拠

Nature Medicine 23, 2 doi: 10.1038/nm.4256

哺乳類組織は、さまざまな栄養素に依存してその生理機能を維持している。代謝の変化はがんの病因に関与することが知られているが、無傷状態の悪性腫瘍の不適切な増殖をどの栄養素が支えているのかは十分に明らかにされていない。アミノ酸は多くのがん細胞に必須の栄養素であり、がん細胞は細胞外タンパク質のマクロピノサイトーシスを介した回収と異化によりアミノ酸を得ることができる。とりわけ、膵臓がん細胞ではマクロピノサイトーシスが栄養供給源である可能性があるが、腫瘍環境が代謝表現型に影響を及ぼす仕組みや、マクロピノサイトーシスが膵臓腫瘍内でアミノ酸レベルの維持を助けているのかどうかは完全に解明されてはいない。今回我々は、小型化した血漿交換装置を使って生きたマウスの組織に標識アルブミンを送達し、アルブミンの分解が膵臓腫瘍での遊離アミノ酸の供給に関わっていることを明らかにした。また、移植可能な超小型装置(引用文献9のものを改変した)を用いて、腫瘍内に直接、アルブミンを送達した。装置の移植後、膵臓がん細胞によるin situでのタンパク質異化とマクロピノサイトーシスが直接観察されたが、隣接する非がん性膵臓組織ではこれは観察されなかった。さらに、腫瘍内でマクロピノサイトーシスを阻害するとアミノ酸レベルの低下が見られた。まとめるとこれらのデータは、膵臓がん細胞がアルブミンを含む細胞外タンパク質を摂取すること、また、この摂取がin vivoでの膵臓がん細胞の重要なアミノ酸供給源となっていることを示唆している。

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