Technical Report

細胞系譜追跡法:遺伝学的な細胞系譜追跡法の精度を2種類のリコンビナーゼを用いて高める

Nature Medicine 23, 12 doi: 10.1038/nm.4437

Cre–loxP組換え系は、幹細胞や前駆細胞の系譜のin vivo追跡で最も広く使われている技術である。この遺伝学的系の精度は、対象とする幹細胞もしくは前駆細胞でのCreリコンビナーゼ発現の特異性におおむね依存している。しかし、対象外の細胞型でのCre発現が、系譜追跡結果の解釈を複雑にすることがあり、これまで多くの研究で議論を引き起こしてきた。今回我々は、Cre–loxPによる従来型の系譜追跡系の精度を高めるためにDre–rox組換え系を組み込んだ、新しい遺伝学的系譜追跡系について報告する。Dre–rox系を組み込むことで、系譜追跡におけるCre–loxP組換えの厳密な制御が可能になり、Cre発現の細胞型特異性に生じかねない不確実性を効果的に回避できる。我々はこの新しい系を使って、議論が続いている最近の2つの問題、すなわち心臓でのc-Kit+心臓幹細胞の心筋細胞への寄与と、肝臓でのSox9+肝前駆細胞の肝細胞への寄与について調べた。この新技術は、Cre–loxPによる非特異的組換えという技術的障害を乗り越えることで、細胞の系譜や運命決定のより高精度な解析を可能にし、疾患や再生の際の幹細胞および前駆細胞の可塑性に関するin vivo研究を容易にするものである。

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