Letter

肥満/糖尿病:Akkermansia muciniphilaの生菌あるいは低温殺菌処理した菌から精製した膜タンパク質は肥満マウスや糖尿病マウスで代謝を改善する

Nature Medicine 23, 1 doi: 10.1038/nm.4236

肥満や2型糖尿病は軽度の炎症や腸内微生物相の組成の特定の変化と関連付けられている。我々はこれまでに、腸内細菌の一種であるAkkermansia muciniphilaをマウスに投与すると、肥満やそれに関連する合併症の発症が防止されることを実証した。しかし、この防御効果の基盤となる機構は明らかになっていない。さらに、A. muciniphilaの酸素感受性や、その増殖用培地に現在は動物由来の化合物が存在することが、この結果をヒト用の臨床医薬品へとつなげるトランスレーショナル手法の開発を制限している。今回我々は、これらの問題への対処を試み、A. muciniphilaをヒトへの投与が可能な合成培地で増殖させてもその有効性が保持されることを明らかにした。予想外なことに、A. muciniphilaを低温殺菌処理すると、マウスの脂肪量増加、インスリン抵抗性、脂質異常症を抑制する能力が増強された。これらの改善は、宿主の尿中メタボロミクスのプロファイルや腸でのエネルギー吸収の調節に大きく関連していた。A. muciniphilaの外膜から単離されたタンパク質であるAmuc_1100はToll様受容体2と相互作用し、低温殺菌処理に使われる温度では安定で、腸の障壁機能を改善し、この細菌を投与した場合の有益な効果を部分的に再現することが実証された。また、この合成培地で増殖させたA. muciniphila生菌あるいは低温殺菌した菌体の投与は、ヒトで安全であることが示された。これらの知見は、A. muciniphilaの多様な調製品をヒトの肥満やそれに関連する疾患を標的とする治療選択肢として使用することの裏付けとなる。

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