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脳血管奇形:CCM3欠損が引き起こすアンギオポエチン2の内皮細胞でのエキソサイトーシスは脳海綿状血管腫の一因となる

Nature Medicine 22, 9 doi: 10.1038/nm.4169

脳海綿状血管腫(CCM)は中枢神経系に影響し、脳出血、けいれんや脳卒中などを引き起こす血管奇形である。CCMは、KRIT1(別名CCM1)、CCM2PDCD10(別名CCM3)の3つの遺伝子のうちの1つに生じた機能喪失変異が原因である。ヒトでのPDCD10の変異は、他の2つのCCM遺伝子に生じた変異に比べるとより重症度の高い疾患を引き起こすことが多く、PDCD10ノックアウトマウスは重度の欠陥を示すが、その機構的基盤は不明である。我々は最近、エキソサイトーシス調節タンパク質のUNC13ファミリーによって仲介されるエキソサイトーシスをCCM3が調節していることを報告した。今回我々は、CCM疾患の進行における内皮細胞エキソサイトーシスの役割を調べ、脳内皮細胞ではCCM3がUNC13BとVAMP3(vesicle-associated membrane protein 3)に依存して起こるアンギオポエチン2(ANGPT2)のエキソサイトーシスを抑制することを見いだした。内皮細胞でのCCM3欠失はANGPT2のエキソサイトーシスと分泌を亢進させ、これには内皮細胞間の結合の不安定化、拡大した血管内腔形成および内皮細胞と周皮細胞の解離を伴っていた。内皮細胞からのANGPT2分泌を減少させるUNC13B欠失、あるいはANGPT2中和抗体の投与は、内皮細胞特異的CCM3欠損により生じる脳と網膜の欠陥、例えば内皮細胞間結合の破壊、血管拡張と周皮細胞の解離などを正常化する。従って、内皮細胞でのANGPT2分泌の亢進は、CCM疾患進行の一因であり、この破壊的な病態に対処するための新たな治療手法となる。

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