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血液学:肝臓で必要に応じて行われる赤血球除去や鉄の再利用には一過性マクロファージが必要である

Nature Medicine 22, 8 doi: 10.1038/nm.4146

鉄は赤血球タンパク質ヘモグロビンに不可欠の構成要素であり、脊椎動物での酸素輸送に重要である。定常状態では、赤血球の産生とその除去とは平衡状態にある。しかし、さまざまな生理学的異常条件下では、赤血球の寿命は大幅に短縮され、それによって生物は貧血や鉄の毒性に脅かされることになる。今回我々は、赤血球を除去して鉄を再利用するための、必要時に発動する機構を突き止めた。LY6C1(lymphocyte antigen 6 complex, locus C1、別名Ly-6C)を高レベルで発現する単球は、ストレスを受け老化した赤血球を取り込み、協調的な走化性の合図を介して肝臓に集合し、フェロポーチン1(FPN1、SLC40A1にコードされる)を発現するマクロファージに分化して、このマクロファージは肝細胞に鉄を送達できることが分かった。単球由来のFPN1+Tim-4(T cell immunoglobulin and mucin domain containing 4、別名Timd4)negマクロファージは一過性であり、胚由来のTim-4highクッパー細胞(KC)の側に存在し、増殖因子Csf1や転写因子Nrf2(Nfe2l2にコードされる)に依存している。脾臓も同様に、鉄を結合したLy-6Chigh単球を動員するが、これらはCsf2の抑制作用のために、鉄を再利用するマクロファージには分化しない。肝臓での一過性マクロファージ集団の集積は、溶血性貧血、炎症性貧血、鎌状赤血球性貧血のマウスモデルでも起こる。ストレスを受けた赤血球の送達時に単球の肝臓への動員を阻害すると、腎臓や肝臓で損傷が引き起こされる。これらの結果は、肝臓が迅速な赤血球除去と鉄の再利用を支える主要な臓器であることを突き止め、また、体が赤血球の完全性の変動に適応する機構を明らかにしている。

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