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がん化学療法:ヒト誘導多能性幹細胞由来心筋細胞はドキソルビシン誘導性の心毒性に対する乳がん患者の罹患傾向を再現する

Nature Medicine 22, 5 doi: 10.1038/nm.4087

ドキソルビシンはアントラサイクリン系の化学療法薬で広範囲にわたる悪性腫瘍の治療に有効だが、用量依存性の心毒性を生じ、これが一部の患者で心不全につながることがある。現時点では、患者がドキソルビシン誘発性心毒性(DIC)の影響を受けるかどうかは予測できない。本論文では、患者特異的なヒト誘導多能性幹細胞由来心筋細胞(hiPSC-CM)が個々の患者のDIC発症傾向を細胞レベルで再現できることを明らかにする。DICを副作用として経験したことのある乳がん患者由来のhiPSC-CMは、DIC経験のない患者に由来するhiPSC-CMに比べて、ドキソルビシン心毒性に対する感受性が一貫して高く、その細胞生存率は低く、ミトコンドリア機能と代謝機能が損なわれ、 カルシウムハンドリングが障害され、抗酸化経路の活性が低下し、活性酸素種産生が増大していた。まとめると、今回の研究結果はhiPSC-CMがDICの遺伝的基盤や分子機構を突き止め、特性を詳しく調べるのに適したプラットフォームであることを示している。

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