Article

がん:膵管腺がん組織の張力調節によって細胞外マトリックスの繊維化と腫瘍プログレッションを誘起する遺伝子型

Nature Medicine 22, 5 doi: 10.1038/nm.4082

繊維化は膵管腺がん(PDAC)の治療を障害し患者死亡の一因となるが、間質を標的とする療法についてはさまざまな議論がある。我々は、上皮のトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)シグナル伝達が障害されているヒトPDACでは、上皮のSTAT3活性が上昇し、硬くて細胞外マトリックスタンパク質の増加した繊維化に伴って、上皮張力が増大して患者生存期間が短縮することを見いだした。複数のKRAS活性化型PDACモデルマウスで、TGF-βシグナル伝達の喪失とインテグリンβ1による機械刺激シグナル伝達の亢進はともに、STAT3シグナル伝達が細胞外マトリックスの繊維化と組織張力の亢進によって腫瘍のプログレッションを促進するという正のフィードバックループに関わっていた。これとは対照的に、上皮でSTAT3を欠失させると、TGFβシグナル伝達の喪失によって引き起こされた間質硬化や上皮収縮性が緩和されて、腫瘍の進行が抑えられた。PDAC患者の生検では、細胞外マトリックスタンパク質の増加とSTAT3活性化が、SMAD4変異とより短い生存期間と関連づけられた。今回得られた知見は、上皮張力と細胞外マトリックスの繊維化がSMAD4に変異が生じている膵がんの悪性度に関与していることを示し、STAT3と機械力がこの表現型の重要なドライバーであることを明確に示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度