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再生医療:同質の神経組織移植による脊髄再構築は皮質脊髄路の旺盛な再生を引き起こす

Nature Medicine 22, 5 doi: 10.1038/nm.4066

皮質脊髄路(CST)はヒトで最も重要な運動系であるが、脊髄損傷(SCI)後にこの投射を旺盛に再生させることはできていなかった。我々は、SCIのラットおよびマウスモデルで、多能性神経前駆細胞の脊髄損傷部位への移植後に、皮質脊髄軸索の旺盛な再生、機能的シナプス形成、前肢の巧緻運動機能の改善が起きることを報告する。皮質脊髄路の再生には、移植神経組織が頭側でなく、尾側(脊髄)の細胞運命を持つことが必要である。完全に成熟した尾側移植神経組織も皮質脊髄路を再生した。また、皮質脊髄路軸索は移植神経組織から出て、損傷部位を越えて再生することができ、この過程はグリア性瘢痕の減弱に関連している可能性が考えられた。ラット皮質脊髄路軸索は、ヒト由来の尾側(脊髄)神経移植によっても再生した。まとめるとこれらの知見は、皮質脊髄路は、相同な神経幹細胞を用いた脊髄「置換」により脊髄損傷部位の内部へ、あるいは損傷部位を越えて、旺盛に再生することを示しており、この結果はSCI研究のまだ成し遂げられていなかった重要な目標を達成し、臨床応用への新しい可能性を示すものである。

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