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がん:腫瘍細胞は異なった進化経路をたどって上皮増殖因子受容体阻害に対する耐性を獲得できる

Nature Medicine 22, 3 doi: 10.1038/nm.4040

上皮増殖因子受容体(EGFR)に変異が生じている非小細胞性肺がんがEGFR阻害剤に対する耐性を獲得する機構は明らかになっているが、薬剤治療の間に耐性クローンがどのように進化していくのかはほとんど解明されていない。我々は、EGFRT790Mゲートキーパー変異によって生じる獲得耐性は、既存のEGFRT790M陽性クローンの選択によっても、また当初はEGFRT790M陰性だった薬剤耐性細胞の遺伝学的進化によっても生じうることを見いだした。薬剤耐性細胞から進化した耐性クローンでは、EGFRT790Mを標的とする第三世代EGFR阻害剤に対する細胞死応答が低下していて、坑アポトーシス因子BCL-xLとBCL-2の阻害剤ナビトクラックスの投与で細胞死応答の感受性が回復するように、耐性へ至る経路は耐性クローンの生物学的性質に大きく影響する。これらの知見は、EGFR阻害剤耐性患者の腫瘍から直接得られた細胞を培養して用いることで確証された。以上の結果は、臨床に関連する薬剤耐性がん細胞には、すでに存在していた薬剤耐性細胞と、薬剤耐性細胞から進化した細胞の両方があることを証拠立てていて、これらからは臨床で耐性の発生を予防、あるいは克服するための治療法が考えられる。

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