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代謝:ヒトの「ブライト/ベージュ」脂肪細胞は毛細血管ネットワークから生じ、それらの移植はマウスで代謝恒常性を改善する

Nature Medicine 22, 3 doi: 10.1038/nm.4031

脱共役タンパク質1(UCP1)は褐色脂肪細胞で高度に発現しており、電子伝達とATP産生とを脱共役させてこの組織で熱を産生させる。UCP1は古典的な意味での脂肪貯蔵部位である褐色脂肪組織の外部でも、「ブライト(brite:brown-in-white)」もしくは「ベージュ」細胞と名付けられた脂肪細胞中で見つかっている。ヒトでは、ブライト/ベージュ脂肪細胞の存在は、痩せて代謝的に健康な表現型と関連しているが、両者の間に因果関係があるかどうかは明らかになっていない。本論文では、ヒトのブライト/ベージュ脂肪細胞前駆細胞が血管新生誘導性因子に応じて、毛細血管ネットワークの拡大に伴って増殖することを報告する。このような前駆細胞から形成された脂肪細胞は、アデニル酸シクラーゼの活性化に応答してUCP1陰性からUCP1陽性へと形質転換した。UCP1陽性は、ベージュ/ブライト細胞の表現型の明確な特徴だが、その一方で呼吸の脱共役を示している。in vitro条件下で活性化されたブライト/ベージュ脂肪細胞を、通常食または高脂肪食(HFD)を与えたグルコース不耐性NOD-scid IL2rgnull (NSG)マウスに移植すると、グルコース耐性が全身的に増強される。このような脂肪細胞は、ヒトの肥満との間に強い関連が見られるプロプロテインコンベルターゼのPCSK1などの神経内分泌因子および分泌因子を発現している。従って、血管新生が誘発されるような条件は、ヒトベージュ/ブライト細胞前駆細胞の増殖を促進し、活性化されたベージュ/ブライト細胞は全身のグルコース恒常性に影響を及ぼす可能性がある。これはおそらく神経内分泌機構を介して起こるのだろう。

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