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COPD:ミトコンドリアでの鉄キレート化はマウスで喫煙誘導性気管支炎と肺気腫を軽減する

Nature Medicine 22, 2 doi: 10.1038/nm.4021

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、喫煙と遺伝的決定因子の両方に関係がある。我々は以前、鉄応答配列結合タンパク質2(IRP2)が重要なCOPD感受性遺伝子であることを見いだし、IRP2タンパク質がCOPD罹患者の肺で増加していることを示した。今回我々は、Irp2を欠損するマウスが喫煙(CS)誘導性実験的COPDを起こしにくいことを明らかにする。RIP-seq(RNA immunoprecipitation followed by sequencing)、RNA-seq(RNA sequencing)、遺伝子発現解析および機能エンリッチメントクラスター解析の結果を統合することにより、Irp2がマウス肺でのミトコンドリア機能の調節因子であることが突き止められた。Irp2はミトコンドリアの鉄負荷とシトクロムcオキシダーゼレベルを上昇させ、こうした上昇はミトコンドリアの機能不全とそれに続く実験的COPDにつながった。ミトコンドリアの鉄負荷が上昇するフラタキシン欠損マウスでは、気道の粘液繊毛クリアランス(MCC)の障害とベースラインの肺炎症の高度化が見られるが、シトクロムcオキシダーゼ合成に欠陥がありCOXが減少しているマウスは、CS誘導性肺炎症とMCC障害を起こしにくかった。ミトコンドリア鉄キレート剤を投与したマウス、あるいは含鉄量が低い食餌を与えたマウスは、CS誘導性COPDから守られた。ミトコンドリアの鉄キレート化はまた、COPDを発症したマウスでCS誘導性MCC障害、CS誘導性肺炎症、CS関連性肺傷害を軽減したことから、COPDではミトコンドリア-鉄軸が重要な機能的役割を持ち、治療介入の対象となると考えられる。

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