Editorial

精神医学研究の視野を広げる

Nature Medicine 22, 11 doi: 10.1038/nm.4235

精神障害は日常生活に大きな負の影響を与える。その生涯有病率は国によって異なるが、WHOは平均して世界で20から35%に及ぶと推定している。欧州と英国では、成人集団のほぼ3分の1が、重症度はさまざまだが、少なくとも1種類の精神障害を患う可能性があるとされている。米国では、NIMHの2014年の統計によれば、成人集団の4%以上が重症の精神疾患に罹患すると推定されている。こうした状況下では、精神障害についての理解、診断や治療を大きく様変わりさせると期待される基礎医学研究、トランスレーショナル研究と臨床研究が緊急に必要であることに疑問の余地がない。Nature MedicineNature Neuroscienceが共同して計画した今回の特集では、神経精神疾患の研究で得られた主要な知見をまとめ、研究者たちが直面している重大な問題を取り上げている。この分野では、オルガノイドから集団にわたるさまざまなレベルでの研究により長年の謎が解明されつつあり、特にこれから実施されるNIHの1万人規模のABCD(Adolescent Brain Cognitive Development)計画のような、若年者の脳と認知機能発達、またニコチン、カフェイン、アルコールやマリファナといった化学物質の使用の発達への影響を調べる縦断的研究は、この分野の成熟をさらに助けるものとなるだろう。またこのような研究から得られた結果は診断や疾患特定のためのバイオマーカーの探索に役立つ貴重な情報源となる。こうした研究の積み重ねは将来、神経精神疾患のリスクの高い若齢患者を発症初期に特定して治療を行い、脳機能の発達過程を正常な経路に引き戻すことを可能にするかもしれない。

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