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がん治療:PIM1キナーゼ阻害はMYC発現の上昇したトリプルネガティブ乳がんに対する標的療法となる

Nature Medicine 22, 11 doi: 10.1038/nm.4213

細胞でエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、およびERBB2(別名HER2)受容体の発現が見られないトリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、転帰が最も不良な乳がんサブタイプである。このサブタイプの乳がんに対しては、実証された分子標的がないために標的療法を使えない。我々はこれまでに、数百の遺伝子の発現を調節する重要な多面発現的転写因子であるMYCが関与するシグナル伝達が、受容体ポジティブ(RP)腫瘍よりもトリプルネガティブ(TN)腫瘍の方で著しく亢進していることを報告している。だが、MYCの発がん転写活性を直接阻害することは困難とされてきた。今回我々は、キノーム(kinome)を標的とするshRNAのスクリーニングを行い、MYCと合成致死性相互作用がある非必須セリン-トレオニンキナーゼPIM1を見いだした。PIM1の発現は、RP腫瘍よりもTN腫瘍で高く、ホルモンネガティブ腫瘍患者やHER2ネガティブ腫瘍患者の予後不良に関連していた。小分子PIMキナーゼ阻害剤は、乳がん患者由来腫瘍の異種移植(PDX)モデルや乳がんのMYC誘導性トランスジェニックマウスモデルでMYC発現の上昇したヒトTN腫瘍の増殖を阻止した。これは、MYCの発がん転写活性を阻害し、内因性の細胞周期阻害因子p27の機能を回復することによっている。我々の知見は、PIMキナーゼ阻害剤の臨床的評価をMYC発現の上昇したTN腫瘍患者で行うことの根拠となるものだ。

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