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神経変性疾患:カスパーゼ-2によるタウ切断は記憶を可逆的に障害する

Nature Medicine 22, 11 doi: 10.1038/nm.4199

アルツハイマー病(AD)などのタウオパチーでは、タウタンパク質が形成する神経原繊維変化が神経毒性であると考えられている。しかし、繊維状のタウはニューロンの細胞死やネットワーク機能不全とは関係づけられておらず、このことから、非繊維状のタンパク質種の関与が考えられる。今回我々は、カスパーゼ-2によるタウのAsp314での切断が、タウの樹状突起棘への誤った送達の促進によって、タウオパチーの動物モデルと細胞モデルで認知機能とシナプス機能を障害するという、新規な病理過程について報告する。短縮型産物であるΔタウ314は原繊維変化を起こしにくく、認知機能障害の見られるマウスやAD患者由来の脳で高レベルに存在している。カスパーゼ-2による切断を受けにくいタウ変異体を発現させると、培養ニューロンでタウタンパク質の樹状突起棘への浸潤、グルタミン酸受容体の所在位置の移動とシナプス機能障害が防がれ、マウスでは記憶障害と神経変性が防止された。カスパーゼ-2の濃度を低下させると、記憶障害を持つマウスで長期記憶が回復した。我々の結果は、タウの樹状突起棘への蓄積の防止により、AD患者でシナプス機能を再確立し、記憶を回復させるための総合的な治療戦略を示唆している。

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