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肺疾患:ヒアルロナンとTLR4は、マウスでサーファクタントタンパク質C陽性肺胞前駆細胞の再生を促し、重篤な肺繊維化を防止する

Nature Medicine 22, 11 doi: 10.1038/nm.4192

損傷を受けた肺の機能回復が成功するには、肺胞上皮細胞を修復し複製を行わせて、肺内部のガス交換領域を無傷の状態に戻し、肺機能を維持することが必要である。肺胞上皮の再生が不適切であると重症の肺繊維化が起こることが多い。肺繊維化には繊維芽細胞の移動と活性化に加えて、細胞外マトリックスの蓄積も関わっている。2型肺胞上皮細胞(AEC2)は成人肺の幹細胞であって、肺の修復過程に関与しているが、AEC2再生を調節している機序は完全には明らかになっていない。本論文では、自然免疫に関わるToll様受容体4(TLR4)とAECの細胞外マトリックスであるグリコサミノグリカンのヒアルロナン(HA)の発現が、AEC2の再生、肺損傷の修復、繊維化する範囲の限局に重要であることの証拠を示す。サーファクタントタンパク質C陽性AEC2で、TLR4もしくはHAシンターゼ2のどちらかを欠損させると再生能が損なわれて重篤な繊維化が起こり、生存率が低下する。さらに、ヒトの重症肺繊維症患者のAEC2では細胞表面のHAが減少し、再生能が損なわれていた。これはHAとTLR4が肺幹細胞の再生の重要な要因であること、また重症の肺繊維症は遠位の肺上皮幹細胞の機能不全によるものであることを示唆している。

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