Technical Report

ミクログリア:ヒト多能性幹細胞からのミクログリア様細胞の効率のよい誘導

Nature Medicine 22, 11 doi: 10.1038/nm.4189

ミクログリアは、その一生を通じて中枢神経系(CNS)に常在する唯一の免疫細胞であり、アルツハイマー病やパーキンソン病、副腎白質ジストロフィー(ALD)などの神経変性疾患に重要な役割を果たしている高度に特殊化したマクロファージである。しかし、ヒトCNSのその他の細胞型と違って、真正ミクログリアは培養ヒト多能性幹細胞から誘導されたことがない。今回我々は、ヒト(h)胚性幹(ES)細胞および誘導多能性幹(iPS)細胞からミクログリア様細胞を迅速に誘導するための、規定の無血清培養条件を用いる安定的で効率的なプロトコルを確立した。in vitroで多能性幹細胞から得られたこれらのミクログリア様細胞(pMGLと略称)は、予想された個体発生とin vivoのミクログリアが持つ特徴を正確に再現し、またヒト胎児初代ミクログリアやマウス胎仔初代ミクログリアに類似している。複数の疾患特異的細胞株からpMGLを作製したところ、レット症候群のhESモデルから誘導されたpMGLは、同系の対照群よりもサイズが小さいことが分かった。また、器官型3D培養へのpMGLの組み込みと生細胞としての挙動を調べるためのプラットフォームについても報告する。このモジュラー分化システムによって、発生に関連する合図にミクログリアが応答して成熟する際の高度に限定された条件下でミクログリアを調べることが可能になり、組織様の環境内に存在するミクログリアの長期的な相互作用を調べるための枠組みが得られる。

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