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脳損傷:外傷性脳損傷で一酸化炭素が周皮細胞と神経発生に及ぼす2つの影響

Nature Medicine 22, 11 doi: 10.1038/nm.4188

低濃度の一酸化炭素(CO)は、セカンドメッセンジャーや神経調節物質として生理的役割を担っている。今回我々は、外傷性脳損傷(TBI)のマウスモデルでCOの影響を評価した。CORM(CO-releasing molecule)-3を投与すると、周皮細胞の細胞死が減少し、神経学的障害の進行が軽減された。対照的に、ラジカルスカベンジャーのN-tert-ブチル-a-フェニルニトロン(PBN)の投与では周皮細胞死は減少したが、神経学的転帰は好転しなかった。CORM-3を投与されたマウスは、溶媒を投与した対照マウスやPBN投与マウスに比べて、神経幹細胞(NSC)内の神経型一酸化窒素シンターゼのリン酸化レベルが高いことが分かった。一酸化窒素シンターゼを阻害すると、in vivoでニューロンマーカーNeuNと増殖細胞のマーカーである5-ブロモ-2′-デオキシウリジン(BrdU)の両方が陽性の細胞のCORM-3による増加が見られなくなり、その結果としてTBI後の神経学的回復が阻止された。NSCは周皮細胞のごく近傍に位置すると考えられているので、周皮細胞とNSCのクロストークがCORM-3によって誘導され、それが神経発生を促進するかどうかを調べた。周皮細胞を酸素およびグルコースを枯渇させた条件下で培養し、CORM-3添加後に回収した細胞培養液は、in vitroでNSCの成熟ニューロンへの分化を増強した。まとめるとこれらの知見は、CO投与は周皮細胞の細胞死を防止し、NSCとのクロストークを回復させて神経発生を促進するので、TBIの治療法となる可能性を示唆している。

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