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微生物学:食餌由来の亜鉛は細菌相を変化させ、Clostridium difficile感染に対する抵抗性を低下させる

Nature Medicine 22, 11 doi: 10.1038/nm.4174

クロストリジウム属の桿菌Clostridium difficileは、米国で最もよく報告される院内病原菌であり、公衆衛生における世界的な緊急懸案事項の1つとなっている。過去10年間に、C. difficile感染症(CDI)の罹患率、重症度、社会的コストは急激に上昇してきた。CDIは、抗生物質による腸内細菌相の崩壊によって発症することが最も一般的である。しかし、抗生物質と関連づけられないCDIの症例も多数報告されており、増加傾向にある。このことから、いまだ判明していない環境因子、栄養や宿主に関する因子がCDIに影響を及ぼしていると考えられる。本論文では、食餌に由来する亜鉛(Zn)を過剰摂取すると腸内細菌相が大幅に変化し、次いでCDIに対する感受性が生じるのに必要な抗生物質の最小量が低下することを示す。C. difficileが定着しているマウスでは食餌由来のZnが過剰になると、毒素活性の上昇や宿主免疫応答の変化が起こり、それによってC. difficile関連疾患が大幅に悪化した。さらに、Zn結合性S100タンパク質のカルプロテクチンがC. difficileに対して抗菌作用を示し、CDIに対する自然免疫応答に必須の因子であることが分かった。まとめると今回の結果は、栄養素であるZnの濃度がCDIに対する感受性や重症度の決定に重要な役割を果たしていること、またカルプロテクチンによる金属量の制限がC. difficileに対する宿主免疫応答における重要な因子であることを示唆している。

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